未払いの残業代とは、法的に会社が支払う義務があるにも関わらず支払われていない残業代のことを指します。
未払いの残業代を放置すると、労働基準監督署による調査を受けたり、退職者からの残業代請求訴訟などのトラブルに発展する可能性があります。
サービス残業による未払い残業代請求は、労働者にとっては正当な権利の回復である一方、企業にとっては法的なリスクやイメージダウンのリスクがあります。
「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」によると、対象労働者数は6万円にのぼり、その残業代の総額は65億円に上り、1企業当たりの残業代の平均支払額は609万円と、企業に大きな影響があるようです。
引用/厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」
未払い残業代を請求された場合、残業代だけでなく、支払うべき金額は他にもあります。
また、未払い残業代には遅延利息が発生し、1年あたり14.6%の利率(現従業員は6%)が適用されます。
さらに、付加金といって、使用者が労働者に一定の金銭を支払っていない場合に、裁判所がその金額と同一額の支払を命ずることができる制度があります。この金額は未払い残業代と同じ金額が請求上限となっています。
業務量が増加すると、従業員は定められた労働時間内に仕事を終わらせることができず、残業を余儀なくされることがあります。このような場合、残業代を支払うことが義務付けられていますが、労働者が責任を感じ自主的にサービス残業を行い発生することがあります。
日本の労働文化では、残業が当たり前のように認識されているケースがあります。このような残業文化が浸透している場合、労働者は残業が必要であると考え、自主的にサービス残業を行ってしまうことがあります。特に、上司からの「残業するように」といった言葉がある場合、労働者は逆らえず、サービス残業を余儀なくされることがあります。
労働基準法による時間外労働の上限は、1日8時間・1週間40時間までと定められています。しかしながら、時間外労働の実態としては、これを超える場合があることが報告されています。時間外労働の適正な管理が行われていない場合、労働者がサービス残業を強いられる可能性があります。具体的には、労働時間の計測が不十分であったり、上司からの無理な命令があったりする場合が挙げられます。
未払い残業を発生させないしくみづくりには、様々なアプローチがありますが、まずは、企業の方針として残業削減を明確にし、社員に対して周知徹底することが重要です。
残業が当たり前という風潮を改め、残業をしなくても仕事ができる環境を整えることが必要です。
加えて、業務の見直しを行い、無駄な業務を削減することで、残業時間を減らすことができます。また、業務を分担することで、個人の負担を軽減することも重要です。
企業はワークライフバランスの改善にも積極的に取り組むべきでしょう。社員のワークライフバランスを改善することも、未払い残業を防ぐために重要です。フレックスタイム制度やテレワーク制度の導入、有給休暇の取得促進などが考えられます。
また、上司と部下のコミュニケーションを改善することで、業務の効率化や問題の早期解決ができるようになります。上司は、部下の負担や進捗状況を把握し、適切なフォローアップを行うことが必要です。
以下に未払い残業を発生させないしくみづくりの主な対策例を紹介します。
日本では長時間労働が慢性化しており、過労死や労働者のストレスによる健康被害が問題となっています。そのため、残業に対する意識の改革が求められています。
まず、企業は働き方改革を進めることが必要です。具体的には、フレックスタイム制度やテレワーク制度など、柔軟な働き方を導入することによって、ワークライフバランスに力を入れ、残業に対する意識改革につなげます。
次に、タスク管理や時間管理を行なうことで、今まで残業をして行っていた業務も、効率よく時間内で遂行することができます。
また長時間労働が当たり前という考え方を変え、働き方改革が進む社会を目指すことが必要です。そのためには、メディアや教育の場で働き方についての情報を提供することが大切です。
労働時間制度や管理体制の見直しには、以下のような具体的な取り組みが考えられます。
従業員が自由に勤務開始時間や終了時間を選べるフレックスタイム制度を導入することで、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能となります。また、通勤時間帯の混雑緩和や、従業員のワークライフバランスにもつながることから、労働意欲向上にもつながります。
テレワークを導入することで、従業員の自宅やカフェなどでの作業が可能となり、通勤時間の削減や育児や介護などの家庭との両立がしやすくなります。また、テレワークを導入することでオフィスのスペース削減が可能となり、経費削減にもつながります。
従業員が働きやすい環境を作るために、上司やマネージャーが従業員の意見や要望に耳を傾け、改善策を実行することが重要です。また、目標管理やパフォーマンス評価など、従業員の成長やキャリアアップをサポートする取り組みも必要です。
従業員が業務を効率的に行うために、業務に必要な情報やツールをオンライン化し、いつでもどこでもアクセスできるようにすることが重要です。例えば、共有ドキュメントやプロジェクト管理ツール、コミュニケーションツールなどが挙げられます。
従業員の健康管理やワークライフバランスを考慮し、有給休暇や特別休暇、育児休暇などの休暇制度を見直すことが必要です。また、長期休暇を取得しやすくするために、代休の積極的な取得や、有給休暇の分割取得なども検討しましょう。
残業削減は生産性向上にとって重要な要素の一つです。過剰な残業により従業員のストレスや健康リスクが増加し、生産性低下や離職率上昇の原因になることがあります。また、生産性向上には正確で効率的な業務処理が必要ですが、長時間の労働により従業員のミスやミスコミュニケーションが発生する可能性があります。残業削減により、従業員の健康維持や業務効率化が図られ、生産性向上につながります。生産性を向上させるためには以下のような取り組みをおこなってみましょう。
業務プロセスを見直し、無駄な作業や手順を改善することで、生産性を向上させることができます。例えば、業務フローの改善や自動化の導入、業務マニュアルの整備などが挙げられます。
組織風土の改善により、従業員のやる気やモチベーションの向上、生産性の向上につながります。例えば、社員の意見やアイデアを取り入れる文化の導入、ミスを恐れずに挑戦する文化の導入、失敗を受け止める文化の導入などが挙げられます。組織風土の改善により、従業員がより創造的で意欲的な仕事に取り組むことができ、生産性の向上につながります。
社員のスキルアップを支援し、能力の向上を促すことで、生産性の向上が期待できます。例えば、研修やトレーニングの実施、新しい技術や知識の学習の機会の提供などが挙げられます。
AIやロボット、クラウドコンピューティングなどの技術やシステムを導入することで、従来の業務を効率的に行うことができるため、生産性の向上が期待できます。ただし、導入前にはコストや導入に伴う従業員の教育・訓練などの課題もあるため、計画的な導入が必要となります。
企業が未払い残業に対して持つべき姿勢は、従業員の健康と働き方改革に貢献することが重要です。
まず、適切な労働時間管理を行い、法律や労働協約に違反しないように注意することが必要です。また、従業員の働き方や業務量を把握し、労働時間が過剰になるような状況を事前に予測し、適切な対策を講じることも重要です。さらに、従業員が未払い残業を行った場合は、適切な手当や休暇の提供、残業代の支払いを遅延させないことが求められます。
従業員の働き方を改善し、生産性の向上につなげることが企業の責任であり、競争力を高めるためにも必要なことです。