ジョブ型雇用とは、企業が必要な職務に応じて、その職務を遂行するために必要なスキル、経験、資格などを持つ人材を雇用する方法です。経団連が2020年3月に発表した「採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書『Society 5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方』」では、ジョブ型雇用を「特定のポストに空きが生じた際に、その職務や役割を遂行できる能力や資格を持つ人材を社外から採用したり、社内で公募する雇用形態」と定義しています。
ジョブ型雇用は欧米の企業では一般的な方法ですが、日本では従来より新卒一括採用で職務を限定せず人材を育成していくメンバーシップ型雇用を採用していました。
近年、専門的な職種が増加し、またコロナ禍の影響でリモートワークが普及したことなどから、最近では大企業を中心にジョブ型雇用が導入されています。
ジョブ型雇用は、企業が必要とする特定のスキルや経験を持つ人材を募集することで、特定のプロジェクトや社内の課題に最適な人材を獲得する可能性が高まります。
採用される人材は、一定水準以上のスキルや経験を持っており、即戦力として迎えられるため、雇用後の研修や教育にかかるコストは最小限に抑えられ、業務効率の向上などの成果も早く現れる可能性が高いといえます。
ジョブ型雇用では、事前に設定された職務記述書や評価基準に基づいて人材を採用します。これにより、評価が主観的な要素に左右されることなく、公正な評価が行われる可能性が高まります。
具体的な職務内容と評価基準が明確にされているため、従業員は自身の業務に対して適切な評価を受けることができ、モチベーションの向上や成長の機会を得ることができます。
ジョブ型雇用では、募集する職務内容と求めるスキルを明確に定義することが重要です。
求職者もこれを理解した上で応募するため、求める人材とのミスマッチが起きにくくなります。
職務内容やスキル要件が明確に伝えられることで、採用後の業務遂行において適切な人材が配置されることが期待できます。これにより、業務の円滑な進行や効率性の向上が図れます。
ジョブ型雇用は、給与、業務内容、勤務地などがあらかじめ明確に定められています。一度採用された後は、基本的にはこれらの条件を変更することはありません。
同じ職務内容でありながら、他社からより魅力的な条件のオファーが舞い込んだ場合、採用されて間もないにもかかわらず、早期に転職に転じることがあります。
給与面や労働条件の改善、キャリアの成長など、個々人の目指す方向やニーズに合致する選択肢が現れれば、転職の意思を持つ人も少なくありません。
早期転職の可能性があるため、企業側はジョブ型雇用の採用者の定着度を高めるための対策を考える必要があります。給与水準の競争力の向上や福利厚生の充実、キャリアパスの明確化など、魅力的な待遇や成長の機会を提供することが重要です。さらに、定期的なフィードバックや評価制度の充実によって、採用者が自身の成果を実感しやすくすることも重要な要素です。採用後のサポートや教育制度の整備も、定着度向上に貢献するでしょう。
ジョブ型雇用では、あらかじめ定められた業務内容や範囲内でのみ働きます。基本的には、その範囲を超える業務は行いません。この制約が存在するため、他の部署で人材が不足した場合でも、ジョブ型雇用で採用された人材を簡単に異動させることは困難です。つまり、組織内で人材の流動的な配置や業務の調整が難しくなるのです。
例えば、ある部署で急な業務増加やプロジェクトの進展に伴って人手不足が生じた場合、一般的な雇用形態であれば他の部署から人材を借りて補完することが可能です。しかし、ジョブ型雇用ではそのような柔軟な人材配置が困難となります。採用された人材は特定の業務に特化しており、その範囲外の業務に参加することが制約されるため、部署間での業務バランスの調整や素早い対応が難しくなります。
ジョブ型雇用の観点に基づいて、会社内の全ての職務について確認します。
職務には仕事内容、責任範囲、役職などが含まれます。
職務の明確化には、従事する従業員からの聞き取りと自己申告等の方法によって行います。
職務の明確化には、両方の方法をバランスよく取り入れ進めることで、適切な明確化が行えるものと思います。
職務に対する報酬体系を設計する必要があります。
報酬水準は、その職務の市場価値を基準に決定されます。まず、営業、技術、人事などの職種ごとに報酬が設定され、その後、責任範囲や部下の人数、職務の重要度などの要素に重み付けを行い、報酬を決定します。
基本的には、仕事内容が増えるほど、責任範囲が広がるほど、また職務の重要度が高まるほど、報酬が増えるような設計になります。
ジョブディスクリプションとは、職務記述書とも呼ばれます。
従事する職務内容や権限・責任、必要なスキルなどをまとめた書類です。
ジョブディスクリプションはジョブ型雇用の基盤となり、企業と個人が契約を結ぶ際に依拠するものです。ジョブディスクリプションの存在があって、ジョブ型雇用が成り立ちます。
企業はジョブディスクリプションの作成において、ポジション名や職務の目的、職務内容と範囲、責任、求められる経験、知識・技能、資格などを明確にします。
職務記述書は、ジョブ型雇用において重要な役割を果たします。
職務や組織の状況は常に変化していますので、職務記述書の定期的なメンテナンスが欠かせません。
新たな業務やプロジェクトが追加されたり、既存の業務が変更された場合、また職務の目標や成果物を見直しなど、職務記述書をメンテナンスしていくことで、人材の定着化にもつながります。