ハラスメントとは、他者を不快にさせたり、不利益を与えたりして尊厳を傷つける行為を指します。また、「いじめ」や「嫌がらせ」とも言い換えられます。
行為者の意図にかかわらず、相手が不快な思いをする行為や不利益を被る行為は全てハラスメントになりえます。
経団連の「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」によると、5年前と比較したパワーハラスメントに関する相談件数で、「増えた」との回答が最も多く、セクシャルハラスメントに関する相談件数では「変わらない」との回答が最も多かったようです。
引用/経団連「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」
また厚生労働省の「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、「いじめ・嫌がらせ」などハラスメントの相談件数は10年以上最も多く、その他の相談件数よりも圧倒的に多い結果となっています。
引用/厚生労働省「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
ハラスメントとは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける行為のことです。
ハラスメントが起こると、職場の秩序が乱れ、社員の能力が十分に発揮できなくなります。社員がハラスメントの現場を目撃してしまうと、自社に対する不安感や不信感が生まれ、エンゲージメントが低下することが懸念されます。さらに、ハラスメントが発生すると、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求が行われる可能性があります。
ハラスメントが公になると、企業のイメージも大きく低下してしまう可能性があります。
コミュニケーション不足が原因でハラスメントが発生することが多いと言われています。
2020年に行われた「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメントが起こりやすい職場の特徴として最も多かったのは、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」という回答だったようです。
引用/厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点」
アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込みや偏見のことを指します。人は、これまでの経験や知識、周りの環境に基づいて、自動的に物事を判断しています。
「普通はこうだろう」とか、「これは絶対にできない」とか、「こうあるべきだ」というように、あらゆるものを自分なりに解釈します。アンコンシャス・バイアスは、誰にでも存在するものであり、悪いことではありません。
しかし、無自覚に持っていることが、相手の尊厳を傷つける原因となることがあります。良かれと思って行動しても、それがハラスメントの原因になることもあります。
職場におけるパワーハラスメントとは、上司と部下や先輩と後輩など、上下関係や権力を利用した嫌がらせのことを指します。具体的には、以下の3つの要素がすべて当てはまる行為を指します。すなわち、優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、身体的・精神的な苦痛を引き起こすことです。
この「優越的な関係」とは、職位の上下関係に限定されず、同僚や部下による行為についても、業務において協力しなければならない場合には、そこでの嫌がらせはパワーハラスメントとみなされます。また、職場におけるパワーハラスメントは、「指導」との境界線が曖昧であるため、ケースバイケースで判断する必要があります。
モラルハラスメントは、精神的な嫌がらせのことを指します。パワーハラスメントとは異なり、上下関係があるわけではありません。モラルハラスメントは、職場全体で無視するなどの行為によって、被害者の精神にダメージを与えます。
モラルハラスメントには、「意見を尊重しない」「見下した態度をとる」などの例がありますが、詳しい状況はケースごとに異なります。モラルハラスメントは見えない暴力であるため、判断が難しい場合があります。
ジェンダーハラスメントは、性別に基づく不平等な扱いや偏見を含む嫌がらせのことを指します。ジェンダーハラスメントは、性別への偏見を原因として、採用や昇進の機会に影響を与える可能性があり、本人の能力や価値が公平に評価されないケースがあります。
関する教育や啓発、通報窓口の設置など、積極的な対策を取ることが求められます。
セクシャルハラスメントは、労働者が望まない性的な言動により、労働条件が悪化したり、就業環境が害されたりすることを指します。この「性的な言動」とは、性的な発言や問い合わせ、性的な噂の流布、性的なジョークや冗談、食事やデートへの誘い、性的な行動、性的関係の強要、身体接触、わいせつな画像の配布や掲示、強制わいせつ行為や強姦などが含まれます。これらの言動によって、被害者は精神的・身体的な苦痛を受けたり、不利益を被ったりする可能性があります。また、同性間での性的な発言にもとづく嫌がらせも、セクシャルハラスメントに該当します。
セクシャルハラスメントには対価型と環境型があります。対価型セクシャルハラスメントは、反抗したことによって労働条件が不利益になることを指し、環境型セクシャルハラスメントは、職場環境が不快になり、就業を継続することができなくなることを指します。例えば、先輩が肩や腰に触れたり、アダルトビデオを閲覧したりすることがあげられます。
マタニティハラスメントは、妊娠中の女性や育児休暇を取得する男女が職場で受ける嫌がらせを指します。具体的には、以下のような発言や対応がマタニティハラスメントに該当します。
「出産したら辞めなさい」、「復職できるか心配だから辞めておいた方がいい」など、出産後の雇用を否定する発言。
出産前に妊娠中の女性に対し、業務を押し付けたり、職場から遠ざけたり、育児休暇を申請した親に対し、「育児は女性がするものだ」といった性別に基づく差別的な発言や、育児休暇明けの業務復帰を拒否などが挙げられます。