「Reskilling(リスキリング)」とは、スキルを再習得することや学び直すことを表す英語の言葉です。経済産業省が2021年に発表した資料によると、リスキリングとは、「新しい職業に就くため、あるいは現職で求められるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを習得すること」を意味します。リスキリングは、様々な変化に対応するために必要とされています。
企業の今後の成長には、成長分野への事業参入や最新デジタル技術の導入・運用が必須とされています。しかし、日本は成長分野のスキルを持つ人材が大幅に不足しているため、深刻な問題に直面しています。
別の業務を担当していた従業員に新しいスキル習得の再教育を行い、新分野での活躍を促進することが、リスキリングの目的となります。
第4次産業革命に対応するためには、技術の進化に追いつくための再教育が必要になってきます。第4次産業革命とは、IoT、AI、ビッグデータの活用による技術革新を指します。これによって、かつて人間が行っていた仕事をAIやロボットが代替する流れや、大量生産型のサービスから個別にカスタマイズされたサービスに移行する流れが含まれます。
第4次産業革命を普及させるには、DXの推進が必要です。DXとは、「企業がITツールやテクノロジーを活用し、ビジネスを推進し、競争力を高めること」を指します。
しかしながら、経済産業省の「DXレポート」によれば、IT人材不足が増加しており、業務効率の低下や国際競争力の低下が懸念されています。
したがって、リスキリングによって、専門的なスキルを身に付けることがますます重要になっています。
リスキリングによって新しいスキルを身に付けることは、自己成長につながるだけでなく、勤め先企業にも貢献することができます。業務の効率化や生産性の向上によって、自社内での活躍の機会が増える可能性があります。業務の範囲が拡大すれば、キャリアアップの可能性も高まるでしょう。
OJT(On-the-Job Training)では、企業で実践しながらスキルや知識を身に付けることができますが、習得したスキルが特定の企業にしか通用しない可能性があります。しかし、リスキリングでは汎用性の高いスキルを身に付けることができるため、新しいスキルを獲得することは転職時にもプラスに働きます。
たとえば、企業内でデジタル化や自動化などのスキルを持った人材は、どの企業でも需要が高いとされているため、自身の市場価値を高めることができます。
IT業界においては、先進技術を必要とするため、高度な専門性が求められます。国内においては、全国的に人材不足が深刻化しています。
企業は従業員にITスキルを習得してもらい、人手不足に対処していきたいと考えている企業は多くあります。
リスキリングを実施する企業は、従業員の知識を最新のものに更新することを目的としています。従業員が知識を得ることによって、キャリアアップを志す人も増えるでしょう。
企業と従業員の絆が深まることで、企業全体の生産性向上や業績アップにつながり、莫大な利益につながる可能性があるため、リスキリングの実施は企業側にもメリットがあります。
一部の企業は、イノベーション企業へ変わるためにリスキリングを推進しています。イノベーション企業とは、新たな価値を創造して社会に貢献する企業のことであり、実現するには今までになかった考え方や技術を組織の中に取り入れることが欠かせません。
イノベーション企業は今後も増加する見込みがあるため、新しいスキルを積極的に身につける人材は需要が高まると考えられます。
まず、企業が目指すべき方向を定める必要があります。スキル習得には多岐にわたる内容があり、企業ごとに必要な要素は異なります。自社の経営戦略や事業戦略に基づいて、現在の課題は何か、その課題を解決するためにどのような人材像やスキルが必要なのかを明確にします。できる限り具体化しておくことで、その後のスキル習得の導入がスムーズになります。
次に、「目指したい姿」と「現状の姿」のギャップを可視化します。自社に足りない要素を明確にすることで、従業員のスキル習得のための優先順位をつけることが可能になります。従業員のスキルをデータ化・マップ化しておけば、スキル習得の進捗度を測定することも可能になります。
まず、習得すべきスキルが決まったら、教育プログラムを検討します。eラーニングや座学研修のほか、従業員による勉強会なども選択肢になります。
学んだことを実践しなければ、スキルアップはできません。教育プログラム修了後は、現場経験が何よりも重要です。実践することで、スキルの強化も期待できます。また、必ず業務の振り返りを行い、改善点を把握することも重要です。業務に活かせた部分は共有し、全社で知見を蓄積することでより効果的なスキルアップが可能です。