トップへ戻るTOP

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは

ワークシェアリングとは、雇用を複数の労働者で分担する概念です。

働く時間を短縮する時短勤務の導入など、労働者の数を増やすための対策が含まれており、注目を集めています。

ワークシェアリングは、1970年から1980年代にかけてヨーロッパで始まり、不況時の失業対策が主な目的で導入されました。実際、オランダなどの国で成功し、失業率が改善されたことから、世界中で広まっていきました。

 

ワークシェアリングが注目されている理由

日本の働き方改革において、ワークシェアリングは失業対策だけでなく、労働者の生活品質やワークライフバランスの改善を目指すためにも推奨されています。

過労死が社会的な問題となっているように、一人の労働者に仕事が集中し、長時間労働が発生する状況は危険です。ワークシェアリングを通じて労働力を柔軟に調整できるようになれば、労働者の適切な勤務時間を確保できることが期待されています。

また、定年後の中高年層や、家庭との両立を望む人々の中には、フルタイムの働き方が難しい人も多く存在します。ワークシェアリングによる短時間勤務の導入によって、ワークライフバランスを実現することができるでしょう。

多様な働き方、例えば短時間勤務などが企業や社会で受け入れられることにより、より多くの人々の労働力を積極的に活用できるだけでなく、少子高齢化社会における人手不足の解消にもつながります。

労働者が自分に適した働き方をすることでパフォーマンスが向上すれば、企業の経営効率も向上することが期待されます。

ワークシェアリングは、労働者の生活を守りつつ企業の活力を高める取り組みとして、近年注目を浴びています。

 

ワークシェアリングの形態

◆雇用維持型(緊急避難型)

一時的な経済的危機や緊急事態に直面した場合、一時的な雇用調整を行いながら、労働者の雇用を維持するための形態です。

具体的な取り組みとしては、短期的な労働時間の削減や休業、一時的な解雇など、労働者の雇用状況に応じた柔軟な措置を実施します。

経済状況が回復するなどの条件が整った場合には、元の労働条件や雇用状況に戻すなど、安定した雇用を目指します。

 

◆雇用維持型(中高年対策型)

中高年層の雇用を維持し、長期間にわたって生産的な労働を続けるための形態です。

具体的な取り組みとしては、労働者のキャリアや経験を活かした仕事の再編や再配置を行います。フルタイムからパートタイムへの移行や、柔軟な労働時間の提供など、中高年層が働きやすい環境を整備します。

スキルアップやキャリア支援プログラムを提供し、労働者の職業的な成長と能力開発を促します。

 

◆雇用創出型

雇用創出型のワークシェアリングは、新たな雇用機会を創出し、失業者の再就職支援や労働市場の活性化を図る形態です。

具体的な取り組みとしては、休職者の業務を複数人のパートタイマーで分け合い、休職者の雇用を維持しながら新しい雇用を生み出す方法などが挙げられます。

 

◆多様就業促進型

労働者が多様な働き方を選択しやすくし、多様性を尊重した就業環境の整備を図るための形態です。

具体的な取り組みとしては、フレックスタイム制度やテレワークの導入など、労働時間や場所の柔軟性を高める取り組みを行います。

パートタイムやアルバイトなどの非正規雇用形態に対する待遇や福利厚生の充実を図り、多様な働き方への選択肢を提供します。

キャリア支援やワークライフバランスの推進に関する制度やプログラムを提供し、労働者が自身のライフスタイルに合わせた働き方を実現できる環境を整備します。

多様性やインクルージョンの重要性を企業や組織に啓発し、性別や人種、障がいの有無に関係なく、すべての労働者が平等な機会を得られる環境を促進します。

 

 

ワークシェアリングを取り入れるメリット

◆企業側のメリット

【働きやすい環境づくりの実現】

・ワークシェアリングによって、労働者の労働時間や勤務形態を柔軟に調整することができます。これにより、労働者は自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能となります。

・フレックスタイム制度やテレワークの導入により、通勤時間やオフィスでの環境によるストレスが軽減されます。労働者はより柔軟な働き方ができるため、ワークライフバランスの向上や仕事に対するモチベーションの向上が期待されます。

・ワークシェアリングは労働者の健康管理にも配慮した取り組みとなります。労働者の健康状態やストレスレベルの管理がしやすくなり、働き手の体調管理やパフォーマンス向上につながります。

 

【企業のイメージが向上】

・ワークシェアリングを取り入れる企業は、労働者の福利厚生や働きやすい環境づくりに積極的であるとのイメージを築くことができます。労働者はより働きやすい環境で働けるため、企業への満足度や忠誠心が高まります。

・社会的な意識の高さや労働者への配慮が評価され、企業の社会的責任やブランドイメージが向上します。これにより、企業への信頼度や魅力が高まり、人材の確保や競争力の向上につながるでしょう。

・ワークシェアリングを取り入れることで、企業の人材育成やダイバーシティ・インクルージョンの推進にも寄与します。多様な働き方への柔軟性を持つ企業として、幅広い労働者層からの注目や支持を集めることができます。

 

◆従業員側のメリット

【負荷軽減・労働時間の短縮】

・ワークシェアリングによって、従業員は仕事の負荷を軽減することができます。仕事を共有することで、個々の担当業務量が減り、労働時間を短縮することが可能です。

・長時間労働の抑制や残業時間の削減が実現されます。労働者は適切な労働時間で働けるため、仕事に対するストレスや疲労が軽減され、心身の健康を保つことができます。

 

【ワークライフバランスの実現】

・ワークシェアリングによって、従業員は仕事とプライベートの時間をバランスよく調整することができます。労働時間の柔軟な調整や休暇の取得が容易になるため、家族や趣味、自己の成長など、自分の時間を大切にすることができます。

・フレックスタイム制度やテレワークの導入により、通勤時間やオフィスでの制約が軽減されます。従業員はより柔軟な働き方ができるため、自分のライフスタイルに合わせた時間の使い方が可能となります。

 

ワークシェアリングを取り入れるデメリット

◆企業側のデメリット

【各種制度の見直し】

・ワークシェアリングを導入するにあたり、既存の労働制度や人事制度、労働条件などの見直しが必要となります。これには時間割りの調整や勤務体系の変更、休暇や福利厚生制度の再構築などが含まれます。

・各種制度の見直しには、時間やリソースを投入する必要があります。従業員の変動するスケジュールに合わせた管理や調整が求められるため、適切な管理体制や人材が必要となるかもしれません。

 

【給与計算が複雑になる】

・ワークシェアリングによって、従業員の労働時間や勤務形態が多様化します。それに伴い、給与計算が複雑になる可能性があります。例えば、労働時間や勤務日数に応じて賃金を算出する必要がある場合、計算方法の見直しやシステムの改善が必要となるでしょう。

・複雑な給与計算は手間や時間を要する可能性があります。労働者の勤務時間の正確な記録や報告が必要となるため、従業員や管理者の負担が増加する可能性があります。

 

◆従業員側のデメリット

【給与の低下】

・ワークシェアリングでは、従業員の労働時間や勤務日数が削減される場合があります。それに伴い、給与も減少する可能性があります。労働時間や勤務日数に応じて給与が算出される場合、削減された労働時間に応じて支給される給与も減少します。

 

【賃金格差が生まれる】

ワークシェアリングできる業務とできない業務との間で賃金の差が生まれることがあります。

ワークシェアリングでは、従業員が業務を分担することで労働時間を短縮することが目的です。そのため、業務の内容や重要度によって報酬が異なることが考えられます。ワークシェアリングが難しい業務や専門性の高い業務は、通常、報酬が高く設定される傾向があります。一方、比較的単純な業務や補助的な業務は、報酬が低くなる可能性があります。

このような状況下では、ワークシェアリングができる業務とできない業務との間で賃金格差が生まれることがあります。

 

ワークシェアリング導入のポイント

Point1.目的と目標の設定

ワークシェアリングを導入する目的や期待する効果を明確にし、具体的な目標を設定します。例えば、労働時間の短縮や生産性の向上など、企業にとっての重要な課題や目標に合わせて設定します。

 

Point2.業務の分析

現行の業務内容やプロセスを詳細に分析し、ワークシェアリングが適用可能な業務やタスクを特定します。業務の可視化や効率化の観点から、重要度や負荷の高い業務、時間の柔軟性がある業務などを選定します。

 

Point3.従業員の参画と意識啓発

ワークシェアリングを導入する意義やメリットを従業員に対して説明し、参画を促します。従業員の理解と協力が不可欠なため、定期的なコミュニケーションや教育プログラムなどを通じて意識啓発を行います。

 

Point4.役割と責任の明確化

ワークシェアリングにおける各従業員の役割と責任を明確化します。業務の分担や担当範囲、連携方法などを明確に定めることで、スムーズな業務遂行とチームワークの確保が可能となります。

 

Point5.制度と報酬体系の整備

ワークシェアリングを支援するための制度や報酬体系を整備します。業務の可否に応じた報酬設定や評価基準、労働時間の調整方法、休暇制度の見直しなど、従業員が公平かつ適切に働く環境を整えます。

 

Point6.フィードバックと改善

ワークシェアリングを導入した後は、定期的なフィードバックや評価を行い、運用の改善点を把握することが重要です。

従業員やチームからのフィードバックを積極的に収集し、ワークシェアリングの実施によって発生した課題や問題点、改善の提案などを受け付け、それを基に改善策を検討します。

フィードバックと改善を繰り返すことで、ワークシェアリングの効果を最大化し、従業員と企業の双方にとってより良い働き方を実現することができます。

 


ワークシェアリングの導入により、企業は人材の獲得と従業員はワークライフバランスの実現など、様々な効果が期待されます。

ワークシェアリングを導入する際には、そのメリットやデメリットを適切に把握し、効果的な取り組みを行うことが重要です。

 

関連記事