「同一労働同一賃金」とは、同じ職場で同じ業務を行う労働者に対して、性別、年齢、雇用形態、契約内容、国籍などに関わらず、同じ賃金を支払う原則です。
この原則は、労働市場において公平な競争環境を促進するために重要な役割を果たしています。同一労働同一賃金を実現することによって、企業が労働者の人種、性別、年齢、国籍などに基づく差別的な賃金格差を是正し、労働者の働きがいと生産性を高めることができます。
しかし、現実には同じ職場で同じ業務をしているにもかかわらず、正社員と契約社員、パートタイム労働者と正社員などの間で賃金格差が存在することがあります。このような状況は不公平であり、同じ業務を行う労働者が同じ賃金を受け取ることができないため、労働者のモチベーションや意欲を下げ、生産性の低下につながる可能性があります。
そこで、2020年4月に改正されたパートタイム・有期雇用労働法では、同一労働同一賃金制度が導入されました。これにより、同じ業務を行う労働者に対しては、基本給、昇給、賞与、各種手当だけでなく、教育訓練や福利厚生についても平等にすることが求められています。
しかしながら、同一労働同一賃金を実現するためには、適切な取り締まりや罰則規定の整備が必要です。現在は、法律に違反しても罰則がないため、同一労働同一賃金を実現するための環境を整備する必要があります。
従来より、パートタイム労働者や有期労働者は正社員に比べて、不合理な待遇差が存在しています。この問題を解消するため、同じ職場で同じ仕事をする労働者に対して、同じ待遇を与える「均等待遇」が導入されました。また、同じ職務で同等の労働成果を出している従業員に対して、異なる報酬を与えることができる「均衡待遇」もあります。
具体的には、均等待遇では、基本給、賞与、昇給、退職金、社会保険などの待遇が、パートタイム労働者や有期雇用労働者にも提供されます。これによって、労働者の待遇を均一化し、公正な労働環境を実現することが目的です。
一方、均衡待遇では、能力や業績に基づいて賃金が設定されます。同じ職務で同等の労働成果を出している従業員に対しては、同じ報酬が与えられますが、能力や業績によっては、報酬が異なる場合があります。
均等待遇と均衡待遇は、待遇格差を解消するための重要な施策です。特に、パートタイム労働者や有期労働者に対しては、適切な待遇を提供することが求められます。
2020年4月に改正されたパートタイム・有期雇用労働法では、労働者への待遇に関する説明義務が強化されました。この改正により、パート・アルバイト、有期雇用や派遣といった非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」について説明を求めることができるようになり、事業主は非正規雇用労働者からの求めに応じて説明する義務を負うことになりました。
2020年4月に改正されたパートタイム・有期雇用労働法において、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備が行われました。
行政ADRは、裁判所に訴訟を起こす前に、行政機関による調停や仲裁によって、労働者と事業主の間の紛争を解決する手続きを指します。
裁判外紛争解決手続は、労働者と事業主が双方の合意によって紛争を解決することを目的としています。そのため、裁判所に訴訟を起こすことに比べ、迅速かつ負担が少ない解決方法となり非公開での進行となるため、職場への復帰もしやすい傾向があります。
裁判外紛争解決手続(行政ADR)の詳細につきましては社労士までお問い合わせください。